Laraaji 「Flow Goes the Universe」
Laraaji が 1992 年にCDのみでリリースした名盤が 2LP仕様でリイシューされました。
Disk 1 A面は丸々 25 分超えの Track 1 "Being Here"。Zitherの音色と広がりのあるリバーブによってゆったりと展開するアンビエント。
そして続く、Track 2 “Immersion“ におけるこぼれ落ちる水の残響音のような不思議な音像から Track 3 "A Cave In England" へ繋がり、同曲中盤からの文字通りの洞窟内のようなサウンドスケープは一聴の価値ありです。
クレジットを確認すると Track 3 は "Recorded at Zefferelli's Ambleside Lake District, England" との記載があり、湖の近くでのセッション時の音源のようです。周辺でサンプリングをした素材なども使われているのかもしれません。
Disk 2 には上述したセッションでの音楽と併せ、東京・大阪でのセッションの音源み収録されています。
ちなみに Zither とは、主にドイツやオーストリアで 16-19世紀頃に広まった弦楽器で、約30本の伴奏用弦と5、6本の旋律用のフレット付き弦が張られています。
こちらの Tiny Dest Concert の映像で Laraaji御大 が Zither を弾く姿を拝めますので併せてぜひ。
Bruno Pernada 「PRIVATE REASONS」
Bruno Pernadasの新譜「PRIVATE REASONS」のLPを予約しました。
Bruno Pernadasはポルトガルのミュージシャン、コンポーザーで、ジャズギターと作曲を学び、アカデミックなバックグラウンドを持つ才人です。
ストリーミングでは今春に解禁された新譜ですが、これまでの作品よりも、よりポップスとして整理されたような印象でとにかく聴き心地がよいです。
Beach boys然としたポップスから、ジャズ・クラシックの素養を感じさせる美しいアンサンブルに至るまで、バックグラウンドの広さを感じさせてくれる作品に仕上がっています。
メディア上では "世界旅行をしたレコードコレクターのカバンをひっくり返したような" という形容をされているのですが、個人的にはちょっとしっくりきません。
幅広い音楽から影響を受けていることは間違い無いのですが、所謂"ごった煮感"は一切なく、洗練されたポップスとして昇華されています。あえて言うならば、"数多の音楽の要素をドロドロに煮込み尽くして旨味だけを抽出して再構築した" という感じでしょうか。
あとライブも最高です。
2018年の FRUE Festival で体験した彼らのライブは間違いなくその年のベストライブの1つでした。
前作以前の音源ではジャズロック然としたスリリングな楽曲の印象が強かったのですが、ライブは多幸感に満ちていてとにかく楽しい。
アンサンブルが絡み合うパートの聴き応えもありながら、リズムの"キメ"の部分でギター・ベース・ドラムのアタックがバチっと揃う瞬間の出音の気持ちよさに頭がくらっとする瞬間が何度もありました(これは会場の音響が寄与した部分も多そうです)。
Youtubeにその時のライブの映像が上がっています。公式のものではないのでリンクは控えますが、ライブ中の最良の瞬間の一つを切り取ったビデオでした。
予約した2LP仕様の限定盤ですが、ヨーロッパのプラス工場の負荷が高くリリース予定が遅れているようです。のんびり待つことにしましょう。
過去作全部LP切ってほしいくらいですが、レーベルも大きくないのでなかなか難しいのかもしれません。どこか出してくれるところないでしょうかね。。
ランタンパレード 「Love is the mystery」
ランタンパレードの新譜が8/14より配信スタートしました。
前作から約5年半振りとなる今作はバンド編成でレコーディングされた一枚。
前作までは歌を中心に据えた繊細なサウンドが特徴的だったが、今作ではフレーズやリズムのループを押し出したディスコ・ファンク調の曲が並ぶ。1曲目の“ダンデライオンブルース”のイントロの少しこもり気味のトーンのギターカッティングとオルガンの音色で完全にノックアウトされます。ファンク名曲を彷彿とさせるフレーズも随所に散りばめられており、ディスコ・ファンクへの愛着が感じられます。
ランタンパレードの作品は、良い意味で“ いびつさ” を感じせる部分があり、それか絶妙なフックになっているのが魅力の1つだと思います。今作も各楽器のフレーズのループのさせ方や言葉の選び方の至る所にフックがあり、単なる懐古主義的なサウンドとは一線を画しています。
嬉しいことにフィジカル発売も決定しており、2021/9/21にLP・CD同時発売となるようです。ぜひレコードで聴きたい一枚です。
マスター・オブ・ゼロ 音楽紹介 シーズン 1 エピソード 3 / Master of None Soundtrack Season 1 Episode 3
THE EQUATICS / Merry Go Round
Episode 3 / Opening Credit
Stones Throw傘下のファンク・レアグルーヴ再発レーベルの"Now Again"から 2010年に再発された一枚より。極上のサイケデリックファンクグルーヴ。
The Human League / Love Action (I believe in love)
Episode 3 / 03:13
レストランで誰をライブに誘うべきか話しているシーン。
イギリスのシンセ・ポップグループによる81年作。
TODD TERJE / Inspector Norse
Episode 3 / 20:35 -
デフがアリスに頼まれて Vine 用の動画を撮るシーン。アリスのやばさが徐々に明らかになってくるにつれて曇っていくデフの表情。
ノルウェーディスコの中心人物 Todd Terije の超名曲。
FATHER JOHN MISTY / Chateau Lobby #4 (in C for Two Virgins)
Episode 3 / 21:35 -
本エピソードのメイントピックである Father John MIsty のシークレットライブの場面で演奏される。放送されたのは2015年なので、FJMとしては 2nd をリリースしたタイミングで、そのなかからシンクルカットされた曲が使われています。FJMがこの時期からすでにアイコン的な存在であったことがわかります。
音楽を担当した Zach Cowie は元々Sub Popで働いており、Fleet Foxes のライブに同行したこともあるそうで、そのつながりがFJMの出演にもつながったそうです。(※1)
MAC DEMARCO / Brother
Episode 3 / 23:28 -
デフとレイチェルがライブ後にバーで再開するシーン。
2014年リリースの名盤2nd"Salad Days"より。
The Jones Girls / You Gonna Make Me Love Somebody Else
Episode 3 / 26:28 -
デフとレイチェルがアフターパーティーで談笑するシーン。
デトロイトのフィメール・ヴォーカル・グループ、ジョーンズ・ガールズの'79年リリースの1stに収録のガラージ・ミドルテンポディスコの名曲。
MARK MORRISON / Return of the Mack
Episode 3 / 28:00
デフがレイチェルをダンスに誘うシーン。
96年発表の UK R&B クラシック "Return of the Mack" のタイトルトラック。
デフが レイチェルを誘う際に、"This is maybe the most amazings song that's ever been created" と言っています。このダンスのシーンもその後のジャケットのポケットにのど飴入れるくだりもいいですよね、、このときまでは、、
BEACH HOUSE / Master of None
Episode 3 / End Credit
Beach House 2006年作の1stより。ドラマと同タイトルの1曲。
Beach House はデビュー時からよく聞いていたのですが、ドラマタイトルとの繋がりにはいざこの曲が流れ始めるまで気が付きませんでした。
曲をもとにドラマタイトルを決めたのか、ドラマと同タイトルの曲を使ったのかについては、明らかにされてはいないようです。Zach Cowie のインタビュー(※1)のなかでも、"この曲を使用したのは Aziz Ansari 自身のアイデアで、どちらが先だったのかはわからない" という主旨で説明されています。
Aziz も元々この曲を知っていたでしょうしタイトルを決める一因になった可能性はありますが、"Jack of all trades, master of none (多芸は無芸、器用貧乏)" という英語のフレーズがもとにあるので、単純に "この曲からタイトルを取った" ということはなさそうです。
音楽好きにはたまらない Episode 3 の音楽紹介でした。
※1 元記事はこちら
Big Thief 「Little Things / Sparrow」
8/10 にリリースされた Big Thief の新曲「Little Things / Sparrow」。
なんの希望も見出すことができないこの2021年の世界にも、こんな音楽を鳴らしてくれるバンドがいることにほんの少しだけ救われる。
マスター・オブ・ゼロ 音楽紹介 シーズン 1 エピソード 1, 2 / Master of None Soundtrack Season 1 Episode 1, 2
テレビをつければ気が滅入るようなニュースばかりの日々ですね。
こんなときこそ”笑いとウィットに富んだ作品を”と思い、未視聴だったマスター・オブ・ゼロ シーズン3 を見たのですが、これが予想を大きく裏切る超ヘビーな仕上がりでさらにダメージをくらってしまいました (作品として本当に素晴らしいのですが)。
このままではいかんということで、シーズン 1 を再視聴。
内容はもちろん使われる音楽も洒落が効いてていいなーと改めて感じたので、気になった曲を何度かに分けてまとめてみます。
ROB BASE, DJ EZ ROCK / It Takes Two
Episode 1 / 13:00-
デフとアーノルドが訪れた子供の誕生日会のシーン。Lyn Collins / ThinkネタのHip Hop クラシック。
APHEX TWIN / Come to Daddy (Re - Mixed by Black Lung)
Episode 1 / 23:00-
デフが将来の子供に家をめちゃくちゃにされることを想像するシーン。 ドリルンベースのごとく家を破壊する子供のエネルギー。
New Edition / Cool It Now
Episode 1 / End Credit
ボストンのキッズソウルグループによる84年リリースのS.T.アルバムからシングルカットもされたヒット曲。
ある女の子に恋に落ちてしまった少年の胸中を歌った歌詞に対し、たしなめるように "cool it now (冷静になりなよ)" というコーラスが入るキャッチーな一曲です。劇中で暴れまわる憎たらしい男の子の少し成長した姿を想像したりなんかして気持ちが緩みます。
Spandau Ballet / True
Episode 2 / 03:39
デフの父親の回想シーン。イギリスのニューウェーブグループの83年のヒット曲。モータウン作品へのオマージュと言われ、アメリカ大きなヒットになった曲です。
PETE ROCK, CL SMOOTH / Reminisce Over You
Episode 2 / Opening Credit
Pete Rockの残した名盤「MECCA AND THE SOUL BROTHER」より。
続くEpisode 3 はトピック満載なので一旦ここで区切ります。
Arlo Parks 「Collapsed in Sunbeams」
前回のPuma Blue に引き続きこちらもロンドンから、Arlo Parksのデビューアルバム。
2020年にリリースしたシングルがどれも珠玉の出来栄えで、アルバムを待望されていましたが、今作はこれまでのシングルに近年新たにレコーディングされた数曲を加えた集大成的なアルバムになっているようです。
ループを多用したHIphop的なトラックの上に、抑制の効いた、けれどもほんのりと甘いボーカルが載る楽曲達はどこか懐かしさを感じさせます。
また、Disco風のリズム・カッティングと浮遊感のあるボーカルが絡む "Too good"や"Just Go "、耳馴染みの良いピアノのコード循環が印象的な”Hope”などは、これまでの作品ではあまり感じられなかったオープンなキャッチーさがあります。
一方で、そこで歌われる詞は、彼女や彼女の周囲の人が感じている痛みや悲しみを写し取ったような内容です。とはいっても、それらと対峙することの必要性を説いたりり、主張を声高に叫ぶようなスタンスではなく、あくまで”そこにあるもの”として受け入れようとするものです。
現在20歳の彼女の目がこの世界をどのように見ているのか、そしてそれを伝えるために彼女が選ぶ言葉、その節々に静かな感動と共感を覚えます。